大日川・黒渕・城戸

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大日川・黒渕・城戸の地図






大日川

向賀名生から五新線は左へカーブし、大日川隧道へ入る。ちょうど隧道の手前で国道と垂直に交差している。神野の辺りまでは、国道168号線が目線に入らない位の高さにあったと思っていたら、今度はいつの間にか真下をくぐっているのだ。道路と鉄道によって高低差がまるで違うということを実感させられた区間であった。先と同じように五新線は直進して山をくぐり抜けるが、国道は川に沿うように山地を迂回する。ここからが西吉野村である。道路上には西吉野村のマスコットキャラクターが立ち、国道脇ではコンテナをそのまま利用した柿の無人販売所などがある。

国道168号線の前身は十津川街道と呼ばれていた。山地の多いこの地区でも、徐々にではあるが道路整備が進められている。曲がりくねった道路を直線的にするためには隧道を通すより他ない。山を避けるように黒渕地区を通っていた国道も、西吉野隧道ができるなどしていた。五新線跡と国道168号線、そして旧国道が入り乱れて城戸まで進んでゆく。

大日川隧道
大日川隧道
全長 532メートル 工期 1958.10─1959.x 撮影:2001年3月
大日川の交差地点
大日川の交差地点
上が五新線、下が国道168号線。 撮影:2001年3月

黒渕

衣笠バス停は、阪本線の中で最も悲惨であった。大日川隧道と衣笠隧道との間にあり、陽も当たらず、集落のない、材木置き場のようなバス停なのである。他のバス停には利用する人数こそ少ないが、人間の匂いが残っているのだ。ごみ箱の中に最近捨てられたごみが入っていたり、ベンチの上にクッションが置かれていたりする。しかし、衣笠のベンチにはきれいに埃が堆積していた。右側には新国道と旧国道の分岐点がある。現在の国道は隧道へ、旧国道はダムや西吉野中学校へとむかう。どこからともなくチェーンソーの甲高い音が響いてくる。隧道内は雨漏りが激しく、雨の日の路面のようになっていた。至る所で見かける老朽化は、この路線ももう長くは続かないなという気持ちにさせる。

旧国道沿いを歩いてみた。消えてしまったのだろうか、もはやセンターラインもない細い道である。この道が再び五新線よりも高い標高まで上がり、衣笠隧道を出て黒渕隧道へ入ってゆく姿を見ることができる。辺りは360度、全て山に囲まれている。途中で電源開発の西吉野第一水力発電所を見ることができる。新国道の西吉野隧道のちょうど中間辺りだ。黒渕隧道を抜けると、バス停からは獣道が続いている。そしてようやく集落が見えてくる。

衣笠バス停
衣笠バス停
この先に衣笠隧道がある 全長 241メートル 工期 1958.6─1959.6 撮影:2001年3月

城戸

城戸までの区間を見ると、地形的に生子までとそれ以降に分けられるだろう。河岸流域に沿って五條から出発した五新線は周囲に住宅地や果樹園を見渡すことができた。生子隧道を抜けてからは八方に緑の山々がそびえ、集落は点在し、段丘上に生活している。国道は、それまでは同じ高さにあった五新線のはるか上を走り、つづら折りになった獣道が広がる。それまでは生活線として使われていた五新線も、生子からは全く使われる様子はない。

城戸バス停は広く開けていて、バスがユーターンできるロータリーになっている。27分間のバス路線もここで終点である。車内アナウンスは全て女性声のテープであるが、終点城戸に着いた時「おお牧場は緑」のメロディも一緒に流れてきた。外には掘っ立て小屋のような産地直売所があり蒟蒻や椎茸が並べてあった。その小屋の隣に黒い西吉野村タクシーが一台ぽつんと止まっていた。

城戸バス停の待ち合わせ場所は「城戸駅」と書かれている。中に入ると部屋が二つに区切られていて、カウンターがついている。その様子はちょうど駅構内の立ち食いそば屋のレイアウトというとわかりやすいだろうか。内部はシャッターがおりたままになっていて、現在はバス乗務員の休憩所のようになっていた。

その奥に見えるのが城戸隧道である。左右の壁が高くなっているのは、山間部に吹く強い風をさえぎるためだろうか。アンパンマンの落書きがそこいらに描かれていた。さすがに隧道の入口には柵ができていて、中には入ることができないが、手前まで駐車場として使われている。地面に敷かれた白いラインが五新線のイメージに不釣り合いである。隧道の手前までゆくと、中から秋風のように冷たい風が吹いてきた。暗い隧道の外に向かって冷たい風が吹いている。まるで五新線の悲しみを表しているかのようだ。ここから先、山間部が続く。五新線は地上に出るよりも隧道のほうが長くなる。周囲の山々はさらに厳しくなり、人々が住む集落というものが見あたらない。

城戸から出るとすぐに村役場がある。ここから168号線とは別方側の西吉野温泉方面へ歩いてみる。川沿いということもあり、魚釣りをしている人を数多く見かけた。道路に沿っては古くからの旅館が立ち並んでいる。釣り具屋もある。時々通りかかる自動車の音を除けば、聞こえてくるのは鳥の鳴き声、川の水の流れ、風の音だけである。

城戸隧道
城戸隧道
全長 759.87メートル 施行 大日本土木株式会社 工期 1976.11.22─1979.8.10 撮影:2001年3月
城戸駅
城戸駅
撮影:2001年3月

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